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おしゃれなWebサイトが集客できない本当の理由と改善ステップ

おしゃれなWebサイトなのに集客できない——広報が最初に直面する壁

「とにかくおしゃれに」。刷新プロジェクトの出発点がデザイン優先になるのは珍しくありません。ところが公開後、「PVは増えたのに問い合わせが増えない」「SNSでは褒められるのに商談がつながらない」という声が上がります。広報の皆さまは、社内の期待と現場成果のあいだで板挟みになりがちです。本稿は、そのモヤモヤの正体――“おしゃれなWebサイトが必ずしも集客に繋がらない本当の理由”を、広報視点で整理します。

集客につながらない本当の理由は“認知のズレ”——4つのズレで分解する

結論から言えば、原因は「認知のズレ」です。事業が届けたい価値と、見込み客が受け取っている価値のあいだに、静かな段差がある。段差は次の四つで構造化できます。

  • 市場のズレ:誰の課題を解くサイトなのかが曖昧で、メッセージが平均化される。
  • 文脈のズレ:検索やSNSから来る人の“用件”と、ファーストビューの訴求が噛み合わない。
  • 翻訳のズレ:専門用語や抽象的コピーが多く、意思決定者の言葉に訳されていない。
  • 計測のズレ:指標がPVや滞在時間中心で、商談創出のKPIに分解できていない。
    この四つが重なると、いくら見た目が美しくても、サイトは「眺めの良い展覧室」になってしまいます。さらに、社内は「作ったのに成果が出ない」外向きは「期待と違った」というすれ違いが生まれ、いわば“不幸な仕事”を増やしてしまいます。逆に言えば、デザインは“価値が届く仕組み”に結び直してこそ、商談という成果に転換されます。

“働く営業資産”に変える設計——検索意図起点×要点カード×意思決定翻訳×KPI

1. 市場を狭め、勝つ土俵を明文化する

最初にやるべきは「誰の、どの瞬間の不安を解くのか」を一文で定義することです。業界や会社規模だけでなく、役割・状況・失敗回避の心理まで含めたペルソナを設計し、その人に不要な情報を思い切って削ります。カテゴリ名や事例も、そのペルソナが検索で使う語彙に合わせて並べ替えましょう。

2. 検索意図と来訪導線に合わせて“用件”を最短化する

主要キーワードごとに、訪問者が最初に確認したい三点(証拠・価格/リードタイム・比較軸)を特定し、ファーストビュー直下に要点カードを配置します。スクロール前に「自分向けだ」「次に何をすれば良いか」が分かることが離脱を減らします。CTAは一種類に絞り、問い合わせ前の“軽い次の一歩”(資料ダウンロード、短い診断、説明会日程)を用意しましょう。

3. 価値を“意思決定者の言葉”に翻訳する

機能や実績の列挙ではなく、「現場の面倒がどれだけ減るか」「失敗リスクをどう下げるか」に言い換えます。ビフォー/アフター、失注しがちなケース、導入の壁と乗り越え方など、意思決定に効く一次情報を提示してください。写真や図版は“美観”ではなく“理解速度”を上げるために使います。

4. KPIを“商談までの階段”に再設計する

PV→資料DL→面談予約→受注のように、ステップごとに目標率改善レバーを定義します。たとえば資料DL率が低いなら、ファーストビューの要点、フォーム項目、DL後のメール導線を見直す。面談予約率が低いなら、納期目安や価格帯の明記、事例の粒度を調整する。計測と改善のサイクルが、デザイン投資の説得力を生みます。

“おしゃれ”は結果であって出発点ではない——広報主導でズレを解消する

おしゃれさは目的ではなく、価値を正しく届けるための器です。市場・文脈・翻訳・計測のズレを整え、ペルソナの“用件”に対して最短で応える設計に変えれば、サイトは展覧室から「働く営業資産」に変わります。広報の役割は、社内外の認知のズレを埋める編集長です。今日からできる一歩として、トップページの要点カード、ペルソナ記述、KPIの階段をチームで合意し、小さく検証を始めてみませんか。見た目の美しさはその結果として、より強い意味を帯びて立ち上がってきます。