• グラフィック

配っても反応がないチラシ。それを「捨てられないお守り」に変えるデザインの発想法。

数字に追われる毎日に、心当たりはありませんか?

「よろしくお願いします!」と心を込めて手渡したチラシが、数歩先でくしゃりと丸められる。時間をかけて準備し、期待を込めて配ったチラシから、一向に問い合わせの電話が鳴らない。営業の現場でそんな経験を重ねると、心が折れそうになる瞬間は少なくないかもしれません。

その努力は、本当に意味がないのでしょうか。もしかしたら、ほんの少し視点を変えるだけで、その他大勢の「広告」から、たった一人の心に届く「お守り」のような存在へと変えられる可能性があります。

なぜ、あなたのチラシは捨てられてしまうのか?

多くのチラシがすぐに捨てられてしまう根本的な原因。それは、受け手にとって「自分ごと」ではなく、一方的な「広告」だと判断されてしまうからです。

私たちは日々、膨大な情報にさらされています。その中で、自分に関係のない情報は無意識のうちに排除しようとするのが自然な心の動きです。たとえ作り手がどれだけ素晴らしい商品やサービスだと信じていても、その価値が「相手の言葉」で翻訳されていなければ、残念ながらその他大勢の広告の中に埋もれてしまいます。

ここに、事業者側が「伝えたいこと」と、顧客が「知りたいこと」の間に生じる「認知のズレ」が存在します。このズレこそが、反応のないチラシを生み出す大きな原因なのかもしれません。

発想の転換:チラシを「広告」から「特別な贈り物」へ

では、どうすればこのズレを乗り越え、相手の心に届けることができるのでしょうか。その第一歩は、チラシを「不特定多数に配る広告」から、「たった一人に宛てた特別な贈り物」へと、発想を転換してみることから始まります。

届ける相手を「たった一人」に絞り込んでみる

「できるだけ多くの人に届けたい」という想いは自然なものです。しかし、その想いが逆に、メッセージの輪郭をぼやけさせてしまうことがあります。「皆様へ」と書かれた手紙よりも、「〇〇様へ」と書かれた手紙の方が心に響くように、届ける相手を具体的に想像することが、伝わる言葉を見つける近道です。

  • その人は、どんなことで悩んでいるのでしょうか?
  • どんな言葉をかけられたら、心が少し軽くなるでしょうか?
  • どんな未来を手にしたら、笑顔になるでしょうか?

オフィスのデスクで、あるいはカフェで、たった一人の理想のお客様の顔を思い浮かべてみてください。その人だけに語りかけるようにメッセージを紡ぐことで、言葉は熱を帯び、不思議と同じような悩みを持つ多くの人の心にも響くようになります。

「商品の説明」から「未来の物語」へ

チラシを作る際、私たちはつい商品のスペックやサービスの特長を並べてしまいがちです。しかし、相手が本当に知りたいのは、その商品やサービスを利用することで「自分の日常がどう変わるのか」という未来の物語です。

例えば、「高性能な最新〇〇!」と伝えるのではなく、「これ一台で、週末のあの面倒な作業から解放され、家族と過ごす時間が生まれます」と語りかける。スペックという「事実」ではなく、その先にある「価値」を伝えるのです。

そのチラシが、相手の抱える問題解決の「お守り」に、あるいは理想の未来への「切符」のように感じられたとき、人はそれを簡単には手放せなくなるのではないでしょうか。

デザインを「飾り」ではなく「翻訳機」と考える

言葉で紡いだメッセージを、受け手の心にスッと届ける役割を担うのがデザインです。情報を詰め込むのではなく、最も伝えたい価値が直感的に伝わるように、余白、書体、色、紙の質感などを選び抜いてみましょう。

  • 温かみを伝えたいなら、手触りのある紙を選んでみる。
  • 誠実さを伝えたいなら、落ち着いた書体と色で構成する。

デザインは、あなたの想いを相手が受け取りやすい形に翻訳してくれる、大切なパートナーです。

一枚の紙に、想いを込めて

反応がないチラシに、心が疲れてしまうこともあるかもしれません。しかし、チラシは単なる紙切れではなく、あなたと未来のお客様をつなぐ、最初のコミュニケーションツールです。

「誰に、何を届け、どうなってほしいのか?」

その原点に立ち返り、たった一人を深く想うことから始めてみませんか。そうして作られた一枚は、きっと単なる「広告」を超え、誰かの心をそっと照らす「お守り」のような存在になっていくはずです。