AIアバターを受付・観光案内に導入する前に|技術と費用対効果の考え方
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映画のようなAIアバターは必要なのか?「何でもできる」を分解して考えるシステム開発

「AIアバターが、映画に出てくるアンドロイドのように、人間味を持って自然に会話できる時代は来るのでしょうか?」

以前、AIアバターの活用について相談を受けた際、このような質問をされたことがありました。

私はそのとき、「きっと来ないのではないかと思います」とお答えしました。

もちろん、技術の進歩を考えれば、将来的に実現する可能性はあります。すでに音声で会話するAIや、映像から周囲の情報を読み取るAIも登場しています。

ただし、一つひとつの技術が存在することと、それらを組み合わせて、誰もが安心して利用できる商品にすることは別の話です。

今回は、AIアバターの受付や観光案内への活用について相談を受けた経験から、システム開発における「できる」と「使える」の違いについて考えてみます。

AIアバターを人間のように動かしたいという相談

実際に、次のような相談を受けたことがあります。

「カメラで人をとらえながら、周囲の音声を拾って、自然に会話できるようにしたい」

イメージとしては、目の前にいる人を認識し、話しかけられた内容を理解して、その場に合った返答をするAIアバターです。

映画やアニメに登場する人工知能を想像すると、とても魅力的な仕組みに感じます。

しかし、これを実際の受付や観光案内で使うとなると、考えるべきことが一気に増えます。

例えば、周囲に複数の人がいる場合、誰が話しかけているのか。

受付の近くで電話をしている人がいたら、その音声にも反応してしまわないか。

複数の人が同時に話しかけた場合、誰に返答すればよいのか。

会話の途中で利用者が離れてしまったら、どのように対応を終えるのか。

こうした問題は、単純に会話性能の高いAIを導入すれば解決するものではありません。

技術的にできることと、現場で使えることは違う

現在のAI技術では、音声による会話、画像の認識、人物の検出、アバターの表情や動作の生成など、さまざまな機能を実現できます。

ただし、それぞれの機能を組み合わせたシステムが、実際の利用環境でも期待どおりに動くとは限りません。

一つのAIに見えても、複数の技術が動いている

例えば、カメラと音声を利用するAIアバターを考えると、次のような機能が必要になる可能性があります。

  • カメラによる人物の検出や状況の把握
  • 音声の取得と、周囲の雑音への対策
  • 利用者の発話を認識する仕組み
  • 質問の内容を理解して回答するAI
  • 回答を音声として出力する仕組み
  • アバターの表情や口の動きを制御する機能
  • 会話の開始・終了や、担当者への引き継ぎを管理する機能

これらを組み合わせるだけでも、設計や技術検証が必要になります。

さらに、実際のサービスとして提供するなら、通信が不安定なときの動作、情報の更新方法、誤った回答への対応なども考えなければなりません。

つまり、映画に出てくるような一つのAIアバターを作ろうとすると、その裏側では多くの専門技術を組み合わせる必要があるのです。

実現する機能が増えるほど、開発だけでなく検証や運用の負担も大きくなります。

技術の問題とUI・UXの問題は別に存在する

もう一つ、気になったのがUI・UXです。

UIは利用者が操作する画面やボタンなどの接点、UXは利用を通じて得られる体験を指します。

例えば、AIアバターへ話しかける方法を考えてみます。

何もしなくても話しかけられる仕組みは、技術的には魅力的です。

しかし、受付のように周囲が騒がしい場所では、利用者がボタンを押してから会話を始める方が、かえって使いやすい場合もあります。

利用者にとっては、会話の仕組みが高度であることよりも、迷わず操作でき、必要な案内を受けられることの方が重要かもしれません。

スマートフォンも、さまざまな技術が詰め込まれていますが、利用者はすべての技術を意識して操作しているわけではありません。

技術を高度にすることと、使いやすい体験を作ることは、必ずしも同じ方向ではない。

AIアバターの導入を考える中で、改めて意識したことです。

AIアバターを万能にするより、人に任せた方がよいこともある

今回の相談で、もう一つ重要だと感じたことがあります。

それは、すべてをAIに任せる必要があるのか、という点です。

例えば、受付業務を考えてみます。

来訪者に施設の場所を案内する。

営業時間や施設の利用方法を説明する。

よくある質問に回答する。

こうした定型的な業務であれば、AIアバターとの相性がよい可能性があります。

一方、複雑な相談への対応や、状況に応じた判断が必要な場面では、人が対応した方がよい場合もあります。

さらに、AIアバターを高機能にしようとすれば、開発費だけでなく、運用・保守・通信・情報更新などの費用も考える必要があります。

それなら、人を配置した方が安く、柔軟に対応できるケースもあるでしょう。

逆に、多言語案内や営業時間外の対応など、人だけでは負担が大きい業務では、AIを活用する価値が出てくる可能性があります。

重要なのは、AIと人のどちらが優れているかではありません。

何をAIに任せ、何を人が担当するのかを、目的に合わせて決めることだと思います。

システムの相談を受けたとき、最初に確認したいこと

こうした相談を受けた際、私たちが大切にしたいのは、すぐに開発方法を決めないことです。

まず確認したいのは、そもそも何のために新しいシステムを導入するのか、という部分です。

今回も、技術的な実現方法だけでなく、次のような点を整理することが必要だと考えました。

  • 現状は何に困っていて、どのように対応しているのか
  • なぜ新しくAIアバターを導入したいのか
  • これまで他社から受けた提案の何がネックだったのか
  • 新しいシステムに何を期待しているのか
  • 利用環境には、どのような制約があるのか
  • 人が対応する場合と比べて、どのようなメリット・デメリットがあるのか

こうした部分を確認しないまま開発を始めると、本来必要のなかった機能に費用をかけてしまう可能性があります。

例えば、受付の負担を減らすことが目的なら、すべての会話をAIだけで完結させる必要はないかもしれません。

定型的な案内はAIアバターが担当し、複雑な質問は人につなぐ。

こうした仕組みでも、目的を達成できる可能性があります。

むしろ、利用者が迷わず目的を達成できることの方が、システムとしては重要です。

最初から完成形を目指さず、できることを細分化する

AIアバターに限らず、新しいシステムを開発するときは、最初から完成形を目指したくなるものです。

しかし、機能が増えるほど、それぞれの技術的な課題やリスクも増えていきます。

そこで大切になるのが、実現したい内容を細分化することです。

例えば、今回のようなAIアバターであれば、最初は限られた質問に回答できる仕組みから考える方法があります。

次に、実際の受付環境で音声がどこまで正確に認識できるかを検証する。

さらに、利用者が操作方法を理解できるか、会話が途切れたときに困らないかを確認する。

必要であれば、その後にカメラによる認識や、より高度な会話機能を追加していく。

これは進め方の一例ですが、こうした小さな技術検証やPoC(概念実証)を重ねることで、何ができて、何がまだ難しいのかを把握しやすくなります。

もちろん、小さく進めても失敗することはあります。

しかし、新規事業では、一度の失敗が大きな損失につながる可能性もあります。

だからこそ、すべてが成功することを前提に進めるのではなく、失敗したときの影響を小さくできる進め方を考える必要があります。

また、外部の開発会社へ依頼する場合も、どこまでを依頼し、自社では何を判断・調査するのかを明確にしておくことが大切です。

技術検証、企画、マーケティング、設計、UI・UXなど、それぞれの専門性が必要になる場合もあります。

ただし、大切なのは単純に人数を増やすことではありません。

必要な役割と責任が整理され、誰が何を確認するのかが明確になっていることです。

まとめ|何でもできそうな時代だからこそ、何をしないかを考える

AIの進歩によって、以前なら難しかったことも実現しやすくなっています。

だからこそ、「AIを使えば何でもできる」と考えてしまうことには注意が必要だと感じています。

技術的に実現できること。

現場で問題なく使えること。

費用対効果が見合うこと。

利用者にとって価値があること。

これらは、それぞれ別の視点から確認する必要があります。

今回のAIアバターの相談を通じて改めて感じたのは、何ができるかを増やすことよりも、何を実現する必要があるのかを明確にすることが大切だということです。

株式会社アンドワイコンセプトでは、新しいシステムやサービスを考える際、完成形を急ぐのではなく、目的の整理と必要な技術検証を重ねながら進めることを大切にしています。

新しい技術を使うこと自体が目的にならないように。

その先で誰が、どのように使うのか。

そこから考えることが、実際に使われる商品やサービスづくりにつながると考えています。