• プロダクト

バイヤーが即決する理由を作る。店頭での「訴求軸」を明確にするデザインの機能美

店頭や展示会の現場で、良いものほど「説明が長くなる」ことがあります。機能も素材もこだわっているのに、相手の反応が薄い。バイヤーや決裁者は忙しく、比較対象も多いので、「理解」より先に「判断」が走ります。ここで効いてくるのが、プロダクトデザインを“営業マンの代わり”として働かせる発想です。

説明しないと売れない商品の共通点

売れない理由が「品質不足」ではないケースは多いです。問題は、価値が“言葉の中”に閉じ込められていること。つまり、見た瞬間に訴求軸が立たず、触った瞬間に機能が想像できない状態です。
バイヤーの意思決定はざっくり言うと、

  • 3秒で「何向けか」を判断
  • 30秒で「売り場で勝てるか」を想像
  • 3分で「数字の根拠」を確認
    という階段で進みます。最初の3秒を超えられないと、どれだけ良い話をしても届きにくいんですね。

「一言で伝わる」強さは、訴求軸の翻訳力

プロダクトデザインの役割は、見た目を整えることではなく「価値を翻訳して、即座に伝える」ことです。ポイントは、ターゲットの状況に合わせて“読み取りコスト”を下げることにあります。

1) 用途が一目で分かる「形」と「比率」

ビジネス用なら、道具感・信頼感・整然さが必要です。角の立て方、面の取り方、厚みの見せ方などで、用途の空気は作れます。奇抜さではなく「迷わなさ」を優先すると、説明が減ります。

2) 触った瞬間に機能が伝わる「手触り」と「抵抗感」

機能性は、スペック表より先に“手の感覚”で伝わります。滑りにくさ、押しやすさ、持ち替えやすさ。触れたときの抵抗感が意図と一致すると、相手は自然に「使える」と判断します。ここは色・素材・仕上げの設計が効くところです。

3) 価値が迷子にならない「情報の優先順位」

プロダクト本体やパッケージに載せる情報は、全部言いたくなります。でも、最初に刺す言葉は一つで十分です。「誰のどんな場面を助けるか」を先頭に置き、次に根拠(機能・仕様)を並べる。優先順位を設計すると、営業トークも短くなり、説明の一貫性も保てます。

4) 比較棚で勝つ「差の見せ方」

店頭や展示会では、横に並んだ3秒で比較されます。ここで効くのは、“差”を説明する前に見せることです。例えば、握ったときに指が迷わない凹凸、光の反射を抑えて上質に見える面構成、使い方が直感で分かるスイッチ配置。相手が「なるほど」と言う前に、身体が理解してしまう設計は強いです。

デザインを営業ツールにする進め方

ここまでを実務に落とすと、流れはシンプルです。

  1. まず市場を細かく区切り、「本当に届けたい一人」を具体化する
  2. その人が店頭で何を手がかりに選ぶか(色・形・触感・言葉)を整理する
  3. 訴求軸を一つに絞り、形状と仕上げで“先に伝える”
  4. 展示会・商談では、その訴求軸だけでデモを組み立てる
    この順番なら、営業が頑張って説明しなくても、プロダクトが先に語ってくれます。さらに、営業資料やWebの表現も同じ訴求軸に揃えると、「聞いた話」と「目の前のモノ」が一致し、信頼が積み上がります。

まとめ:最強の営業ツールは「沈黙の説得」

優れたデザインは、派手さではなく「判断を助ける設計」です。用途が一目で分かり、触れば機能が想像でき、言葉を尽くさなくても価値が立ち上がる。そういうプロダクトは、商談の入口で相手の迷いを減らし、決裁のスピードを上げます。

もし展示会や提案で苦戦しているなら、「説明の量」を増やす前に、「一言で伝わる」訴求軸がプロダクトに埋め込まれているかを見直してみませんか。デザインが営業マンの代わりに働き始めると、商談は驚くほど軽くなります。