&Y CONCEPT
単発で売れた商品ほど、実は次が難しいです。初回ロットは勢いで捌けても、2回目の企画で「何を変え、何を守るのか」が決まっていないと、社内も外注先も迷い始めます。結果として、開発は遅れ、見た目はバラつき、値引きで帳尻を合わせる……。この流れが続くと、せっかくのヒットが“一発屋”で終わってしまいます。
今回のリュック開発で強調したいのは、単なる「形を良くした」ではなく、カラー展開・サイズ展開・次期モデルまで視野に入れた、拡張性のあるデザイン設計を最初から組み込んだ点です。デザインを「点の納品」にせず、「線の資産」に変えるための考え方として整理します。
ヒットが続かない会社に共通する落とし穴売れた要因を振り返ると、多くの場合は“偶然の重なり”が含まれています。たとえば、露出のタイミング、価格のハマり方、競合の空白、季節性。ところが、次の企画では同じ条件が揃いません。そこで必要になるのが、偶然ではなく再現性です。
再現性を作るうえで厄介なのが、「デザイン=見た目」と捉えてしまうことです。見た目だけを都度つくると、次のモデルで毎回ゼロから意思決定が始まります。ハンドル形状、ポケット配置、縫製線、パーツの選定、色の印象。判断基準が言語化されていないので、会議は長くなり、試作は増え、コストも膨らみやすくなります。さらに、ECや店頭で並んだときに“同じブランドに見えない”状態が起き、広告や広報の積み上げも効きにくくなります。
拡張性とは、単にバリエーションを増やすことではありません。「増やしても崩れない」ことです。そのためには、デザインの判断を支える“意匠のルール(デザイン言語)”を先に確立します。イメージでなく、誰が見ても同じ解釈に近づけられる形にします。
まず、市場とペルソナを具体化し、「この商品が誰の何を楽にするのか」を一文で固定します。ここがブレると、色もサイズも追加するたびに方向性が揺れます。逆に、約束が決まると、迷ったときに戻る基準になります。「軽さ」なのか「整理のしやすさ」なのか「大人っぽさ」なのか。価値の優先順位をつけておくと、機能追加や意匠変更の取捨選択が速くなります。
次に、リュックの“らしさ”を要素に分解します。たとえば、輪郭の比率、角の丸み、パネルの切り替え位置、ステッチの見せ方、金具の形状、引き手の長さ、ファスナーの見え方。これを「辞書」として列挙し、組み合わせのルールを「文法」として定義します。ここまでやると、カラー展開でも迷いが減ります。色を変えるなら、素材の光沢・汚れの目立ち方・金具の反射まで含めて“同じ人格”に見える範囲を決められます。サイズ展開でも、ただ拡大縮小するのではなく、バランスが崩れやすい箇所(ポケット比率や持ち手の位置)を先に押さえられます。
拡張性は、意匠だけでは成立しません。量産で効くのは共通化です。パーツや型紙をどこまで共有できるか、縫製工程の増減がどこで起きるか、色や素材が変わったときに歩留まりがどう変わるか。ここを設計段階で見ておくと、次期モデルの試作回数が減り、開発スピードと利益率が守れます。今回のリュックでも、見た目の統一感を保ちつつ、展開しやすい“共通の骨格”を先に作りました。だからこそ、次のモデルで「ポケットを追加する」「容量を変える」といった変更が入っても、全体の顔つきが崩れにくく、判断が早くなります。
まとめ:デザインは「点」ではなく「線」で考える単発ヒットをブランドに育てる鍵は、拡張性のあるデザイン設計で“判断基準”を資産化することです。意匠のルールがあれば、カラー展開・サイズ展開・次期モデルが一本の線でつながり、開発も広報も積み上がります。もし今、次の商品企画で迷いが増えているなら、追加のアイデアを増やす前に、「何を守るブランドなのか」を言語化してみませんか。そこから始めると、次の一手が“偶然の当たり”ではなく、続くブランドの基盤に変わっていきます。
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