&Y CONCEPT
ホームセンターの棚には、似たような非常時用品がずらり。ネットを見れば、価格と容量の比較表が並びます。中小製造業が自社製品を作りたいと思っても、「結局どこで差が出るのか分からない」と手が止まりやすいのが、この“競合過多”の領域です。
その象徴が防災リュック。必要性は誰もが理解しているのに、なぜか購入は後回し。ここに、市場の「穴」を見つけるヒントがあります。
非常時用品が売れにくい最大の理由は、品質ではなく購買の優先度です。災害は起きてほしくないし、起きる日も読めない。すると購入は「いつか」の箱に入れられ、他の支出に負けます。
さらに競合が増えるほど、比較軸は「価格・容量・付属品」に寄っていきます。これがコモディティ化の入口です。良いものを作っても、最後は値引き競争に巻き込まれやすい。
そこで発想を反転させます。非常時用品を、非常時のために売らない。日常で使うから買う、という動機に置き換える。日常と非常時を分けない考え方(いわゆるフェーズフリー)に立つと、同じリュックでも戦う市場が変わります。
防災市場は「備える」ための市場です。一方、ビジネスバッグ市場は「毎日使う」市場。頻度が高く、買い替えも起きやすい。つまり市場規模の“母集団”が変わり、購買優先度も上がります。
ポイントは、商品そのものを変える前に「何の市場の、誰の、どんな場面の道具か」を定義し直すことです。
まず、業界の前提を10個書き出してみませんか?例:「非常時用品は保管される」「購入者は防災意識が高い人」「中身が多いほど価値がある」など。前提は、壊すために可視化します。
「必要だけど買わない」には必ず理由があります。面倒、置き場所、選べない、ダサい、使い道がない。ここを否定せず、生活のリアルとして受け止めます。
人は「使うもの」にお金を払います。通勤、出張、子どもの送迎、ジム、ノートPCの持ち運び。日常の動線の中で、リュックが必要になる瞬間を特定すると、商品要件が一気に具体化します。
容量や付属品は真似されます。ずらすべきは体験です。例:毎朝の荷物整理が早くなる、雨の日でも中身が守られる、会社と自宅の移動が軽くなる。非常時には、その延長線で「いつものバッグがそのまま役に立つ」状態を作ります。
市場が広がるほど、言葉は薄まります。だからこそ解像度の高いペルソナが必要です。「誰にとっての“毎日”か」を決めると、収納設計、素材、見た目、価格の納得ラインまで一本の線でつながります。
防災リュックの例が示すのは、差別化の源泉は機能追加ではなく“市場の再定義”だということです。「非常用」の枠に閉じ込めるのではなく、日常の価値として成立させる。すると競争相手も、比較の物差しも変わります。
商品企画で迷ったときは、まず市場とペルソナを定義し直し、「本当に届けたい一人」の日常に入り込む設計を考えてみませんか。見た目を整える前に、価値が届く方向を決める。そこから先に、コモディティ化しない企画が立ち上がっていきます。次の一手が見えてきます。
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