• ウェブ

Webサイトのペルソナ設定の重要性を家づくりに例えて解説

Webサイトは家づくり。まず「誰に住んでほしいか」を決める重要性

広報の現場では、社内の要望をすべて載せた「情報の豪邸」を作りがちです。しかし、アクセスはあるのに問い合わせが増えない、採用応募がミスマッチ、SNSの反応も薄い――。そのモヤモヤの多くは、設計の最初にあるべき「誰に住んでほしいか(=誰に体験してほしいサイトか)」が決まっていないことから生まれます。家づくりで入居者不明のまま間取りを決めると、動線も収納もチグハグになりますよね。Webサイトも同じです。まず“住む人”を定義しない限り、良い導線も言葉も選べません。

ターゲット不在が生む「認知のズレ」と回遊迷子の構造

ページは増え、情報は充実しているのに成果が伸びない――これは「事業者と顧客の認知のズレ」が原因です。社内の視点で語るほど、訪問者の生活文脈から離れていき、回遊は迷子になり、離脱が増えます。トップページで「全部見せたい」は、玄関からいきなり倉庫・寝室・地下室へ案内するようなもの。広報が担うべきは“装飾”ではなく、“適切な入居希望者を迎え入れる導線設計”です。つまり、マーケットの定義と高解像度のペルソナ設定が先にあり、その人が歩くストーリーに合わせて間取り(情報構造)と言葉(コンテンツ)を配置すること。ここを飛ばすと、どれだけ見栄えを整えても「不幸な仕事」(反応はあるが成果に繋がらない)を量産してしまいます。

マーケット定義→高解像度ペルソナ→情報設計の3枚の設計図

戦略設計は「3枚の設計図」から

  1. マーケットの地図
    業界全体ではなく「このサイトが迎えたい入居者が探す言葉・比較軸・状況」を特定します。例:意思決定者は誰か、検討のきっかけは何か、決め手は何か。これは土地選びに相当します。
  2. 入居者像(高解像度ペルソナ)
    年齢・役職だけでなく、日々のタスク、避けたいリスク、決裁プロセス、失敗経験を描きます。収納量や通勤動線まで決める家づくりと同様に、細部の行動を言語化します。
  • 仕事の「前後関係」:訪問前に何を見て、訪問後に何をするか
  • 使う用語と禁句:相手の言葉で説明できるか
  • 情緒と論理:不安を軽くする言葉と、判断を支える根拠の両輪
  1. 間取り(情報アーキテクチャ)
    玄関=トップ、内覧導線=主要ナビ、リビング=主要価値、子ども部屋=用途別ページ、収納=FAQ・資料、ライフライン=問い合わせ・見積り。各部屋に「入室の目的」「滞在中の体験」「次の部屋への動線」を付箋レベルで設計します。

コンテンツは「入居前→内覧→入居後」の3段階で

  • 入居前(検索段階):課題の言語化記事、比較チェックリスト、失敗回避ガイド。タイトルは相手の検索語をそのまま使います。
  • 内覧(サイト滞在):導入で“自分ごと化”→要点の結論→根拠→事例→次の行動。1ページ1メッセージを徹底。
  • 入居後(関係構築):導入支援メール、型紙(テンプレ)、運用事例のアップデート。再訪の口実を用意します。

表現は「生活文脈×証拠」で

  • 生活の一部としてのベネフィットを最初に提示(例:稟議の短縮、問い合わせ対応の削減)。
  • それを支える客観的な証拠(数値、プロセス、ビフォー・アフター、第三者の評価)を同一画面内で提示。
  • ビジュアルは“豪華な外観”より“暮らし方の写真”(利用シーン・画面遷移・書類の簡素化)を優先。

指標(KPI)は「内覧品質」を測る

  • 回遊率:想定した導線どおりに次ページへ進めているか。
  • 読了率:主要ページの要点まで読まれているか。
  • マイクロCV:資料DL、チェックリスト利用、下書きフォーム保存など“入居準備”行動を計測。
  • 本CV:問い合わせ・見積り・採用応募。
    数値は“誰に住んでほしいか”に対する適合度を評価するためのもの、と定義しておくとブレません。

広報の実務ロードマップ(90日)

  • 0–30日:3枚の設計図作成。社内ヒアリングは「用途別・決裁別」に実施。
  • 31–60日:トップと主要導線を先行改修。1ページ1メッセージと証拠の対で試作。
  • 61–90日:検索用コンテンツと入居後支援を整備。KPI基準を合意し、毎月の改善会を定例化。

「誰に住んでほしいか」を決めれば投資は最短距離になる

Webサイトは、最初に“誰に住んでほしいか”を決めるほど、余計な部屋を作らず、必要な導線に投資できます。これは装飾の話ではなく、事業と顧客のあいだにある「認知のズレ」を解消し、関わる人すべてを幸せにする設計思想です。広報が先頭に立ち、マーケットの定義と高解像度のペルソナをもとに、生活文脈に沿った間取りと言葉を整える。そこから生まれるのは、見た目の豪華さではなく、「ここに住みたい」と自然に感じてもらえる体験です。今日できる一歩として、まず“入居者”の一日を描写し、玄関からの最短の導線を書き出してみませんか。